オラトリオ「メサイア」について、団員のKさんがまとめたものです。

歌詞

16世紀の英語(現代英語より少し古い形)

すべて聖書の言葉である。(旧・新約聖書から自由に抜粋)
但し、チャールス・ジェネンズ(1700~1773)が台本作成に当たり、語順を変えたり、前後・中間を省略したり、中間に聖書の別の箇所の言葉を挿入しているところも一部にあります。

また、聖書の中でイエス・キリストの言葉として第一人称(I)で語っているところを、台本では演奏をする立場から第三人称(He)に置き換えているところもあります。

しかし、聖書以外の言葉を付け加えたり、ジェネンズの時代(18世紀)の英単語に置き換えたりした部分はありません。

台本に取り上げた聖書は、英国国王ジェームス一世の命令によって翻訳され、1611年に出版されたものです。
この聖書はThe King James Version又はAuthorized Versionといわれ、第二次世界大戦後1950年代まで英語圏の国で日常的に使われていました。(日本では「欽定訳」といっています。)

聖書


旧約聖書新約聖書があります。(訳ではなく約です)
神様との契約の書物という意味です。

旧約聖書(神様との古い契約の書)

律法の書、歴史の書、預言の書、詩の書など39巻で構成されていて、紀元前2世紀ごろまでに、ほぼ現在の形にまとめられた。(原典はヘブル語、一部アラム語)

新約聖書(神様との新しい契約の書)

イエス・キリストの生涯と、その教えを書いた福音書、手紙など27巻で構成されていて、紀元4世紀ごろまでに確定した。(原典はギリシャ語)


旧約聖書というのはキリスト教で新約聖書に呼応する呼び方である。
ユダヤ教の経典も、いわゆる旧約聖書であるが、ユダヤ教では「律法」「預言」「諸書」と呼んでいる。

ちなみに、イスラム教でも旧約聖書に出てくる人物と同一人物を、自分たちの先祖と認めており、戒律など似ている点が多いといわれております。

預言者


神の言葉を語るために神によって呼び出された人。
「預言」というのは、神の言葉を「預」かって語るということであり、未来のことを「予」め言い当てる「予言」ということとは本質的に違います。

メサイアの内容


「Messiah」とは「油を注がれた者」という意味で、救世主(メシア)のことです。

第1部

第1曲~第12曲 「イザヤ書」などに書かれた「預言」によるメシア(救い主)の出現。

第13曲(Pifa) 羊飼いが野宿をしている様子をオーケストラが描写。
3拍子ののリズムは「パストラ-ル」と云って、羊飼いたちが野宿をしている風景を表現するものとして、宗教曲のイエス降誕場面によく用いられる。

第14曲~第21曲 救い主の誕生を多くの人々が喜び、それに対する期待と、一方では人々が期待する救い主像とは違うイエスの優しい姿が描かれている。

第2部

第22曲~第31曲 イザヤの預言を中心にイエスの犠牲による受難と、それによる救済を歌う。

第32曲~第44曲 神の意志への人間の抵抗が描かれるが、最終的に人間は神の前には敵ではなく、打ち砕かれて敗北する。
そして全能の神をハレルヤコーラスで「王の王・主の主」と讃える。

第3部

第45曲~第53曲 個人がキリストを信ずることによって死を克服し、永遠の命を得ることを歌い、そして、そのことへの感謝の讃歌を歌う。


(文責 団員K)